BY JUNKO ASAKA, PHOTOGRAPHS BY MANA MIKI
梅雨シーズンまっただ中のこの時期、平野さんがピックアップしたのは宮崎県の老舗ワイナリー「都農ワイン」の弱発泡性ワイン「キャンブルスコ・ロゼ ペティアン」。「湿度の高い梅雨どきや日本の夏には、こんな爽やかな泡が飲みたくなりますよね」という、おすすめの1本だ。
「宮崎県は、気温も高いし雨も多く台風も多いという、ワインづくりにはとても厳しい土地。都農ワインは、そんな環境の中、意欲的にいろいろなタイプのワインをつくっているワイナリーです。チャーミングなワインがたくさんありますが、中でもキャンベルアーリーはワイナリーを代表するワインだと思います」
<今月のワイン|都農ワイン「キャンブルスコ・ロゼ ペティアン」 >
キャンベルアーリー種は戦後間もない頃から宮崎県都農町で栽培されてきた、この土地ならではのブドウ。そのワインは、イチゴを思わせるフルーティな香りとフレッシュな味わいが魅力だ。「このキャンブルスコ・ロゼの弱発泡性ワインは今年新しくリリースされたばかり。キャンベルアーリーと、北イタリアを代表する発泡ワイン“ランブルスコ”をかけあわせて名づけられたそうです。ランブルスコも甘みがあって、土地に根付き、人々に愛されているワインですから、そんなところから命名されたのかもしれないですね」と平野さん。
「フレッシュな甘みと心地いい泡が魅力ですが、甘いだけではなくて、ほどよいタンニンと酸もあり、余韻のあるワイン。ぐっとくる日本の泡はそれほど多くないんですが、これはとてもおいしいと思います。甘みのあるワインって、以前はいわゆる“女子どものワイン”のように思われていたところもありますが、少し甘みのあるものは、じつはワイン好きな人には人気が高い。和食や中華には調味料からくるほんのりとした甘みのある料理が多いですから、合わせられる料理の幅も広いんですよ」
平野さんがこのワインとのペアリングで提案してくれたのは、「豚とマンゴーのサラダ」。「最近はフルーツを使った料理が人気ですが、このワインには宮崎県特産のマンゴーを合わせてみました。今回は少しエスニック風にして、梅干しをタレに加えてアクセントに。梅干しにはほどよい甘みと酸があるので、ワインに合わせるお料理にはとても使いやすいんです」
豚しゃぶ肉は、煮立たない程度のお湯でゆでることで、驚くほどふんわりとやわらかな食感に。香菜の独特の風味と、ナンプラーやレモン汁、梅干しの酸味が効いたエスニック風ドレッシングが、ワインのうまみをいっそう引き立ててくれる。「たとえば生ハムや、トマトソースを使った冷製パスタなど、カジュアルなイタリアンにもすごく合うと思います。でも、とにかくフレッシュでおいしいワインですから、難しいことを考えず、暑い日にゴクゴク(笑)、気軽に飲んでいただきたいですね」
<今月のレシピ|豚肉とマンゴーのサラダ>
材料(2人分)
豚しゃぶしゃぶ肉150g、マンゴー1/2個、ルッコラ数枚、香菜1茎、新玉ねぎ1/8個、梅肉大さじ1、ナンプラー小さじ2、レモン汁大さじ1、水大さじ1、砂糖(梅干しの甘さで加減する)小さじ1程度、オリーブオイル適宜
1. 豚肉は70〜80度くらいの温度でゆで、ざるにとって冷ます。
2. マンゴーは食べやすい大きさに切り、ルッコラ、香菜はざく切りにする。新玉ねぎは薄切りにし、水にさらした後、水気を拭く。
3. 梅干しは種を取って叩きペースト状にし、そのほかの調味料と混ぜる。
4. 1、2を3で和えて、仕上げにオリーブオイルを回しかける。
平野由希子
素材を生かしたシンプルでおいしい料理に定評のある料理研究家。書籍や雑誌、広告で活躍するかたわら飲食店のプロデュースや商品開発も手がける。日本ソムリエ協会認定ソムリエで、ワインバー「8huit.」のオーナーでもある。ワインと料理のペアリングが楽しめる料理教室も大人気。最新刊『ソムリエ料理家の ワインを飲む日のレシピ帖』(KADOKAWA)は、5分でできる簡単おつまみから本格的な煮物まで、ワインに合うレシピ118点を掲載
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