世界中の美食家から愛されるパリのスターシェフ、ギィ・マルタン。自らのシグネチャーにもフォアグラ料理をもつ彼が、このほど日本への輸入が解禁となったフォアグラの現状とその魅力を語る

BY MIKA KITAMURA, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO

 美食の象徴でもあるフォアグラは、その肥育方法から非難を浴びることも。フォアグラ・アンバサダーであるマルタンシェフはその点について、真摯な口調でこう語る。
「ガチョウや鴨に必要以上の餌を与えるガヴァージュ(強制給餌)を行うことは、確かに動物愛護の点で非難されています。私の子供時代まで、ガヴァージュはよく行われていましたが、現在、肥育方法は格段に進化しています。

画像: 世界でナンバー1のフォアグラ生産量を誇るフランス。アルザス地方やラングドック地方も有名だが、ランド県やペリゴール県を中心とした南西部で80%を生産している。写真はフランス南西部で放し飼いされているサラド社のガチョウ COURTESY OF SARRADE

世界でナンバー1のフォアグラ生産量を誇るフランス。アルザス地方やラングドック地方も有名だが、ランド県やペリゴール県を中心とした南西部で80%を生産している。写真はフランス南西部で放し飼いされているサラド社のガチョウ
COURTESY OF SARRADE

 サラド社を例にあげれば、鴨たちは、広々とした田園の中で、のびのび放し飼いにされている。エンジニアや農医学者の協力のもと、鴨の年齢や体重、季節によって必要な分量を計算し、飼料を食べさせています。出荷直前にたくさんのとうもろこしを与え、これによって肝臓がほどよく大きくなり――大きければいいというものではありません――高品質なフォアグラになります。
 私がサラド社のアンバサダーになった理由が、ここにあります。自然のなかで健やかに育った鴨やガチョウからこそ、健康なフォアグラが生まれる。そのことを大勢のフォアグラ生産者や料理人、食べ手に知らせたいのです」

 理想的なフォアグラは、重さがひとつ450〜550g、薄いクリーム色をしていて色つやがよく、弾力があってやわらかい。しかも、加熱してすぐに溶けてしまわないもの、とマルタンは言う。すぐに溶けるものは食材としての歩留まりが悪く、非経済的でもある。長らくフォアグラを自身のスペシャリテとして扱ってきたシェフだけに、その品質に対するこだわりは厳しい。

画像: ギィ・マルタンと業務提携している東京・永田町の「ザ・キャピトルホテル 東急」では、オールデイダイニング「ORIGAMI」でマルタン氏プロデュースのディナーコース¥9,000(税サ込み)を提供。写真は「サラド社 鴨のフォアグラテリーヌ アニスとグリーンカルダモン風味の野菜のクロッカン フヌイユのピューレ」 ザ・キャピトルホテル 東急 公式サイト COURTESY OF THE CAPITOL HOTEL TOKYU

ギィ・マルタンと業務提携している東京・永田町の「ザ・キャピトルホテル 東急」では、オールデイダイニング「ORIGAMI」でマルタン氏プロデュースのディナーコース¥9,000(税サ込み)を提供。写真は「サラド社 鴨のフォアグラテリーヌ アニスとグリーンカルダモン風味の野菜のクロッカン フヌイユのピューレ」
ザ・キャピトルホテル 東急 公式サイト
COURTESY OF THE CAPITOL HOTEL TOKYU

「『トリュフクリームをかけたフォアグラのラビオリ』は私の定番料理です。料理人になりたての1980年頃、これを考案しました。いまもスペシャリテとして作り続けていまますが、レシピは少しずつ変えています。当初はバターをたっぷり使っていましたが、いまは豆乳に替えて以前より軽い仕上がりに。サラド社の高品質なフォアグラは、このスペシャリテには欠かせません」
 この秋から、東京のザ・キャピトルホテル 東急のオールデイダイニング「ORIGAMI」に、彼のプロデュースによるディナーコースが登場。サラド社のフォアグラテリーヌを使ったひと皿が日本でも楽しめる。

「フォアグラはレストランで食べるものという印象があるかもしれませんが、市販のテリーヌでしたら、家庭でも簡単に楽しめるでしょう。食べる20分前に冷蔵庫から出し、7〜8㎜厚さに切り、薄切りパンのトーストにのせてフルール・ド・セルをふります。冷蔵庫から出し立てをすぐに食べるのは御法度です。温度が少し上がると、フォアグラの風味が花開き、まったりした食感が味わえる。おいしく食べるコツですよ」
 これに合わせるなら、シャンパーニュが最高!とマルタンシェフ。一般にフォアグラにはソーテルヌのような甘口ワインが合うと言われることが多いが、シェフのおすすめはアルザスの辛口の白ワインだという。

「あるいは、スパイシーなコート・ド・ローヌの赤でも。夏ならボジョレーの軽い赤を冷やしたり、日本酒も合うと思いますよ。季節やその日の気分で選んでいただければいいのです。楽しみ方にルールはありません。いまは流通が進化し、世界中どこの国でも、通年でフォアグラを楽しめるようになりました。フォアグラのテリーヌは瓶詰めや缶詰でありますから、日本の方もお祝いの席で気軽にフォアグラを楽しんでいただけたらと思います」

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