70歳以上の女性アーティスト16名が集結する森美術館の『アナザーエナジー展』。今、なぜ世界は彼女たちに注目するのか?

BY YURIKO YAMAKI(P2, P4~5), EDITED BY JUN ISHIDA

伝統的な彫刻の概念にとらわれず、独特の哲学で生み出すオブジェ
PHYLLIDA BARLOW(フィリダ・バーロウ)
長年アートスクールで彫刻を教えながら制作してきたフィリダ・バーロウ。ここ10年で俄かに、世界的に知られる作家となった。

画像: PHYLLIDA BARLOW(フィリダ・バーロウ) 1944年、英国ニューカッスル・アポン・タイン生まれ。チェルシー・アート・カレッジとスレード美術学校で学ぶ。卒業後、美術学校で彫刻を教えながら制作を続け、1980年代から個展を開催。2010年代以降、急速に欧米で注目を集め、’17年に第57回ベネチア・ビエンナーレ英国代表に選ばれる。現在、ミュンヘンのハウス・デア・クンストで大回顧展『フロンティア』を開催中 PHOTOGRAPH BY CAT GARCIA

PHYLLIDA BARLOW(フィリダ・バーロウ)
1944年、英国ニューカッスル・アポン・タイン生まれ。チェルシー・アート・カレッジとスレード美術学校で学ぶ。卒業後、美術学校で彫刻を教えながら制作を続け、1980年代から個展を開催。2010年代以降、急速に欧米で注目を集め、’17年に第57回ベネチア・ビエンナーレ英国代表に選ばれる。現在、ミュンヘンのハウス・デア・クンストで大回顧展『フロンティア』を開催中
PHOTOGRAPH BY CAT GARCIA

―― 展示される新作はどのようなものに?
 タイトルは《アンダーカバー》です。当初は美術館の入り口とメインフロアに分けた作品を制作するつもりで準備していましたが、コロナの影響で変更せざるを得なくなりました。でも、その変更のプロセスも楽しみました。森美術館を実際に訪れたことがなかったので、大型の模型を創り、遠隔でやりとりしながら約1年かけて制作しました。鑑賞する人には、オブジェの回りを歩いて、内側、外側、360度、いろいろな角度から見てほしいです。2017年のベネチア・ビエンナーレで展示した《フォリー》のように、さまざまな素材を用いており、一部には布も使用しています。

―― 最近の作品ではオレンジ系の色をよく使用されていますが、新作では?
 ええ、使っています。中間色が好きなんです。オレンジ系は土の色に近いですよね。それでいて、暗いロンドンの街では映えます。人はモノを目にしたとき、色と形のどちらを認識するのでしょう? 目立つ色を用いることで、そうした問いを喚起することもできます。

画像: フィリダ・バーロウ《無題:キャンバスラック;2018-2019》2018-2019年 コンクリート、キャンバス、ハードボード、塗料、プラスチック、集合材、鉄、テープ、木材 サイズ可変 コンクリートに刺された木材が有機的にキャンバスを支える作品。 COURTESY OF CROSS STEELE COLLECTION 展示風景:「袋小路」ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(ロンドン)2019年 PHOTOGRAPH BY DAMIAN GRIFFITHS

フィリダ・バーロウ《無題:キャンバスラック;2018-2019》2018-2019年 コンクリート、キャンバス、ハードボード、塗料、プラスチック、集合材、鉄、テープ、木材 サイズ可変
コンクリートに刺された木材が有機的にキャンバスを支える作品。
COURTESY OF CROSS STEELE COLLECTION

展示風景:「袋小路」ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(ロンドン)2019年
PHOTOGRAPH BY DAMIAN GRIFFITHS

―― 影響を受けたアートは? ずっと探求してきたテーマは何ですか?
 若い頃は、日本の前衛美術集団「具体美術協会」やイタリアの芸術運動「アルテ・ポーヴェラ」、インドの建築などに衝撃を受けました。堅苦しい技術志向の伝統彫刻の概念を崩し、新しいものを創り出そうとしてきました。

―― 理想とするフォルムとは?
 永久に存在する物体ではなく、いつか終わりの来るモノや変化するモノに惹かれます。以前は制作場所が狭かったので、作品を壊して素材を再利用することもありました。あらかじめ決めたフォルムを創るのではなく、気に入らなければ壊してさらに模索します。相反するものが一緒になって何かを生み出すこともあるのです。布、ベニア板、石膏など硬さや質感の異なる素材を用いるのも、その差
異を利用して面白いオブジェができあがってくるからです。

画像: フィリダ・バーロウ展示風景:《フィリダ・バーロウ:突堤 2014》デュヴィーン・ギャラリー、テート・ブリテン(ロンドン)2014年 第二次世界大戦で空襲に見舞われたロンドンには終戦後も廃墟が残り、子どもの頃に見たその風景が影響を与えたという作品。「破壊と修復が私の彫刻のプロセスです」(フィリダ) COURTESY OF HAUSER & WIRTH, PHOTOGRAPH BY ALEX DELFANNE

フィリダ・バーロウ展示風景:《フィリダ・バーロウ:突堤 2014》デュヴィーン・ギャラリー、テート・ブリテン(ロンドン)2014年
第二次世界大戦で空襲に見舞われたロンドンには終戦後も廃墟が残り、子どもの頃に見たその風景が影響を与えたという作品。「破壊と修復が私の彫刻のプロセスです」(フィリダ)
COURTESY OF HAUSER & WIRTH, PHOTOGRAPH BY ALEX DELFANNE

―― 女性彫刻家という立場で思うことは?
 学校で学んでいた頃、女性であることはある程度歓迎されましたが、実際はとても男性中心主義でした。でもこの30年間ぐらいでアートのあり方は変化してきて、織り物や陶芸など、従来は工芸と思われていたような分野もアートとみなされています。私自身はこのアートは良いとか悪いとか、男だから女だから、という枠組みを超えたところで物事を捉え、制作しています。

<TJメンバーズ限定>
森美術館『アナザーエナジー展』特別鑑賞会に
抽選で25組50名様をご招待
開館前のAM9:30~10:00、T JAPAN貸切にてゆったりとご鑑賞いただくことができる特別鑑賞会にご招待します。

森美術館『アナザーエナジー展』T JAPAN 特別鑑賞会
開催日時:2021年5月14日(金)9:30~10:00 ※10:00の開館後も滞在、鑑賞いただけます。
応募期間:4月15日(木)~25(日)
当選者には、4月28日(水)までにメールでご連絡いたします。
※ 応募期間は終了いたしました

・お一人様ご応募は1回までとさせていただきます。
・権利の譲渡はご遠慮ください。

※ ご応募には「TJメンバーズ」への登録が必要です。すでに会員登録がお済の方は、アカウントへログインのうえご応募ください。

『アナザーエナジー展:挑戦しつづける力 ー世界の女性アーティスト16人』
会期:2021年4月22日(木)〜2021年1月16日(日)
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 53階
開館時間:<4/22~5/11日まで>10:00~20:00(火曜〜17:00、5月4日(火・祝)〜20:00まで)
※ 入館は閉館の30分前まで。会期中、開館時間が変更になる場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください
休館日:会期中無休
チケット購入:事前予約制(日時指定券)を導入。専用オンラインサイトから「日時指定券」のご購入・予約可。 当日、日時指定枠に空きがある場合は、事前予約なしで入館も可能。料金詳細はこちらをご確認ください
電話:03(5777)8600(ハローダイヤル)

※ 新型コロナウイルス感染予防に関する来館時の注意、最新情報は公式サイトを確認ください

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