BY KIMIKO ANZAI, PHOTOGRAPHS BYSHINSUKE SATO
近年、ブルゴーニュでは女性の造り手の活躍が目立つが、それは以前には考えられなかったことだという。歴史のあるブルゴーニュでは、長いあいだ女性が直接ワイン造りに携わることは許されなかったのだ。
「ワイナリーでの女性の役割は畑仕事の補佐や経理など、いわば“裏方仕事”が多かった。でも、近年になって、レセプション担当など、表に出てくる女性が増えてきました」(千砂・ビーズ)
「昔は、醸造どころか、女性はカーヴにも入れませんでした。女性の生理がワイン造りに障ると考えられていたのね」(ソフィー・ムニエ)
「現代になって人々の意識が変わり、女性たちも堂々とワインに向き合えるようになった。本当に幸せなことです」(アンヌ・モレ)
彼女たちの話を聞いていると、同じ女性同士、互いにブルゴーニュワインを盛り立てていこうという強い意志が、静かに伝わってくる。
また、近年のブルゴーニュワインにおいて大きく変化したのが、自然農法に関する造り手たちの意識だ。ビオロジックやビオディナミを実践する造り手も格段に増えたという。
「畑の様子は、20年前とはかなり変わりました。除草剤を使わない造り手が増えたこともありますが、法律でも除草剤の使用が規制されるようになるなど、行政も変わりつつあります」(千砂・ビーズ)
「なるべく自然に、ブドウそのものの免疫力を高めようという方向に向かっていますね。ハーブを使うなど、肥料も工夫されるようになってきました」(ソフィー・ムニエ)「
うちの畑でも実践しているけれど、ビオディナミは魔術でもなんでもないわ(笑)。天体のカレンダーに沿って農業をすることは、人間が自然なままに生きることと同じだと思うの。ブドウが健康であるために、大もとである自然のサイクルを意識するのは、人間が免疫力を高めるために健康でいようと努力することと一緒ね」(アンヌ・モレ)
これらの言葉を受けて、千砂はこう語る。
「私は畑に向かう時、畑を通じて地球を健康にすることをイメージしています。植物たちは、この畑で居心地がいいかしら? と考えながら仕事をすると、自然とスタッフの意識も変わってくる。居心地のいい畑からはおいしいワインができると、私は信じているんです」