BY KIMIKO ANZAI, PHOTOGRAPHS BYSHINSUKE SATO
東京・虎ノ門のホテル「アンダーズ東京」のサロンの一室。四人のフランス人女性とひとりの日本人女性が談笑しながら、思い思いに高層階からの東京の景色をスマートフォンに収めている。「ほら、うっすらと富士山が見えるわ」、「美しい街ね。大都会なのに静けさがあるわ」とリラックスした表情で話に花を咲かせている。
顔を揃えていたのは「トロ・ボー」のナタリー・トロ、「ジャン・ジャック・コンフュロン」のソフィー・ムニエ、「ピエール・モレ」のアンヌ・モレ、「エリック・ド・シュルマン」のドミニク・ド・シュルマン、そして「シモン・ビーズ」の千砂・ビーズ。いずれもブルゴーニュファン垂涎のワインの造り手である。
来日の団長を務める千砂・ビーズは、ワインファンにはよく知られた、日本人にとっての“ブルゴーニュの顔”的な存在だ。名門「シモン・ビーズ」に嫁いだが、ドメーヌの名声を上げた醸造家で夫のパトリックが2013年に突如他界。以後、義妹のマリエル・グリヴォとともにドメーヌを守り続けている。日本にも彼女の応援団を自認する人は多く、ブルゴーニュでも他の生産者から厚い信頼を寄せられている。
「私たち5人は、よく一緒にお茶を飲んだり、気軽に食事をする間柄。プライベートのことも仕事のことも、気軽に話し合っています。以前からよく『日本に連れて行って』とせがまれていたんです。ナタリーは4、5回来日経験がありますが、ほかの3人は今回が初めて。念願叶って、今、こうして“女子会”を楽しんでいます(笑)」
5名の生産者を前にして驚いたのは、それぞれのドメーヌのワインが、皆、造り手である彼女たちのイメージそのままであることだ。スタイリッシュな「トロ・ボー」、やわらかく、優しい味わいのニュイ・サンジョルジュの造り手「ジャン・ジャック・コンフュロン」、洗練されたムルソーが魅力の「ピエール・モレ」、チャーミングさが生きた「エリック・ド・シュルマン」、そして繊細さとピュアさが際立つ「シモン・ビーズ」。どれもが個性的で、それがブルゴーニュワインの多彩さ、ひいては“彼女たちのキャラクターそのもの”をも物語っている。ブルゴーニュワインは、一般的に村や畑の違いによって味わいが異なるといわれるが、造り手たちの人間としての個性も反映されているワインでもあるのだと実感した。