TEXT & PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
カフェ・スイーツ
下鴨「茶寮 宝泉」

重厚感溢れる門構え
閑静な住宅街と知られる下鴨に店を構える「茶寮 宝泉」。高い塀に囲まれた築100年を越す屋敷がそのまま使われていて、「旧家?それとも料亭?」と思うほど、立派な佇まいだ。
門をくぐり、苔が美しい前庭を横目に石畳を進み、玄関へ。そのアプローチも非日常に誘われる。
「宝泉堂」は1947年、小豆を使った半生菓子の卸販売から始まり、1999年には「あずき処 宝泉堂」を構え、小売り業もスタート。2004年、本店から徒歩2分の場所に建つ200坪を有する邸宅を譲り受け、茶寮が誕生した。
寒い時期、食べたくなるのが「丹波白小豆ぜんざい」だ。白小豆は、生産量が少なく希少なことに加え、小粒で皮が薄くいため美しく炊き上げることが難しく、ぜんざいで提供されることは珍しい。

小豆の粒をつぶさないようていねいに炊かれ、汁が澄んでいる。「丹波白小豆ぜんざい」¥1,250
くせがない白小豆は抹茶の風味を邪魔しないため茶人好みとされ、茶席用の上生菓子に使われていることも多く、ぜんざいにしても、雑味がなく、あっさり。
お汁粉に近いとろりとしたぜんざいと違い、おすましを彷彿させるほど澄んだ汁も特徴的。
粒も皮が破れずふっくら炊かれていて、上品な味わいに癒やされる。
「茶寮 宝泉」
住所:京都府京都市左京区下鴨西高木町25
営業時間:10:00〜17:00(16:30LO)
定休日:水・木
TEL. 075-712-1270
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河原町「甘党茶屋 梅園 河原町店」

プチプチ食感のあわもちの上にはツヤツヤのあんがこんもり。「あわぜんざい」¥1,100(11月中旬〜3月末)
昭和2年創業の甘味処。本店である「河原町店」は、京都のメインストリート、河原町通に面していて立地も良く、小さい時は祖母や母に連れられ、高校時代は友達同士で訪れた思い出いっぱいの店だ。
名物は、舞妓さんがおちょぼ口でも食べやすい、俵型のみたらし団子。団子自体にも甘さをつける店が多いが、こちらでは団子に砂糖を入れておらず、タレ自体も甘ったるさがなくサラリ。あっさりしているので何本でもいけてしまう。

「みたらし団子」4本¥480。甘味を注文の場合、みたらし3本¥300を付けることもできる
「甘党茶屋 梅園 河原町店」
住所:京都市中京区河原町三条下る山崎町234-4
営業時間:10:30〜19:30(19:20LO)
定休日:無休(年末年始を除く)
TEL. 075-221-5017
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河原町今出川「茶房 いせはん」

「丹波栗ぜんざい(お餅)」¥1,350。白玉は¥1,200(栗の渋皮煮がなくなり次第終了)
出町枡形商店街のほど近く、京都の日常が残る出町柳エリアに佇む「茶房 いせはん」。元々はこの場所で「伊勢半」という荒物屋を営んでいたが、1997年に茶房に転身。創業時から小豆を炊き、あんみつやあんみつを提供していたものの、その頃はモーニングやサンドイッチもあり、喫茶店色が強かったという。
店主・伊藤良崇さんは、それまで甘味を作った経験はなかったが、試行錯誤を繰り返し、甘味メニューを日々改良。気付けば、甘味のおいしい店として知られるようになった。
丹波大納言ぜんざいも、いせはん流の作り方に。あんみつなどに使用しているしっかり形が残った粒餡と、パフェなどに使う粒感をところどころに感じる”半ごろし”と呼ばれる餡を炊き合わせるのが特徴で、お汁粉のようにとろりとした口当たりとしっかりとした粒感を両方味わうことができる。
毎秋、丹波栗の時期になると、丹波栗の渋皮煮入りぜんざいが登場するのもお楽しみ。鬼皮をむいた後、アクを抜き、砂糖で煮るのだが、栗が硬くならないように、砂糖を何度かに分けて入れ、途中で火を止めて中までじっくり甘みを浸透させるなど、手間暇を要する。そうしてできあがった渋皮煮はしっかり形が残りつつ、口に運ぶと、ほろりと崩れ、ほっくり栗の甘みが広がる。あんことの相性も抜群だ。

かつては鯖街道の終着点として栄えた出町柳エリア。出町柳駅からは徒歩4分
「茶房 いせはん」
住所:京都市上京区青龍町242
営業時間:11:00〜18:30(18:00LO)
定休日:火曜(祝日は営業)
TEL. 075-231-5422
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木屋町松原「SUMI」

カフェラテ¥600
「SUMI」が店を構えるのはここ数年で店が増えてきた松原五条の角。行列ができるハイセンス立ち食いそば「suba」のお隣で、実はこちらも「suba」のオーナー鈴木弘二さんが営む店だ。
「この辺りは新しい店が増えてきて。街づくりってほど大層な話じゃないですが、コーヒーの店があったらいいなと思っていたんです」と、鈴木さん。2023年7月にオープンした「SUMI」は、コーヒーとワインを楽しめるスタンドになっている。
2面ガラス張りで、気候のいい時期は扉を開け放ち、開放感いっぱいに。店内はハイテーブルとスツールが4席あるのみで、混んできたら、立ち飲みしたり、外のコンクリートブロックに腰掛けたり。自由な空気感も心地いい。
ワインもコーヒー感覚で気軽に楽しんでもらうようにグラスワインはオール500円に。コインを購入し、ベンダーにコインを入れてセルフで注ぐスタイルも楽しい。

角打ち的に2階で購入したボトルワインを1階で飲むこともできる
すぐ近くには鴨川や高瀬川も流れ、コーヒーをテイクアウトしたり、朝10時からワインを飲んだり。さくっと気負わず立ち寄れるので、予定を詰め込みがちな旅行中の止まり木にちょうどいい。
「SUMI」
住所:京都市下京区木屋町通松原上ル美濃屋町182-10
営業時間:10:00~23:00
定休日:無休
TEL. なし
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二条城前「コロラド コーヒー マスサン」

タマゴトーストとコーヒーのセット¥1,400
二条城前に店を構えて52年、1972年創業の喫茶店「コロラド コーヒー マスサン」。
「コロラド コーヒー」は、京都・北白川に本店を構えるコーヒー豆の焙煎・卸し会社「ワールドコーヒー」が展開するコーヒーチェーン店ながら、こちらは個人経営の特別枠。
「うちのおばあちゃんがワールドコーヒーの社長さんと知り合いで、コロラドコーヒーをチェーン展開するから一号店をやらないかって言われて、店を始めたようです」と、三代目・熊谷建太朗さん。そのため、店名には、創業者・熊谷増子さんが親戚内で呼ばれていた愛称“マスサン”がつけられている。
コーヒーも、通常の「コロラドコーヒー」ではコロラドブレンドを使用しているが、こちらでは、マスサンオリジナルブレンドを提供。コロンビアやブラジルなど7種類の豆をブレンドし、京都の老舗喫茶店に多いコクの際立つ深煎りで、創業時はミルクと砂糖を入れて飲むのがデフォルトだったそう。

アイスコーヒーも以前はミルクとシロップ入りで提供していたそう。¥500
イートイン用には、イギリスパンや角食パンのほか、カスクート用のバゲットやパニーニ用の通称白パン、ランチのパスタに添えるパンも焼かれている。
パンまでおいしいサンドイッチと深煎りコーヒーは朝の目覚めのベストコンビ。朝7時から営業していてるので、京都旅のスタートにもおすすめです。
「コロラド コーヒー マスサン」
住所:京都市中京区東堀川通御池上ル押堀町40
営業時間:7:00〜18:00(17:30LO)
定休日:木曜
TEL. 075-231-2992
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河原町五条「cité(シテ)」

コーヒーショップを奥に進むと古着屋さんに
京都駅や四条河原町からも近く、それでいて京都の日常が感じられる五条エリアに2023年にオープンした「cité(シテ)」。
店を営む古着バイヤー吉田明史さんと台湾出身のバリスタ・リン ダンテイさんのカップルは元々はパリで暮らしていたが、2023年に京都へ移住。
古民家を改装した店舗は二人の強みを活かし、手前がカフェ、奥が古着ショップになっている。
ひと昔前のパリでは、どこも同じ大手メーカーの深煎り豆を使ったエスプレッソ系ドリンクが主流だったが、20年前から自家焙煎の店やプアオーバーで浅煎りコーヒーを出す店が増えている。リンさんも、浅煎りで豆自体のフルーティーさが引き立つ北欧スタイルのコーヒーが好きだったそうで、パリのブーランジェリーでバリスタとして働いた後、台湾で焙煎を習得した。

パッションフルーツやマンゴー、ココナッツのニュアンスがふわり。コーヒーの精製工程で天然酵母を加えて発酵させた「コロンビア・モンテブランコ農園のフルーツ ブラウンシュガー酵母発酵・ウォッシュ」の浅煎り¥620
自身の店はプアオーバーとエスプレッソ系のどちらもそろえ、プアオーバーでは自家焙煎の浅煎りシングルオリジンコーヒーを提供。ウォッシュドやインフューズド、アナエロビックなど、精製方法もさまざまに豆の個性が際立っている。
エスプレッソ系ドリンクの豆は自家焙煎の中煎り豆をブレンド。「今日のは赤ワインぽいニュアンスだし、昨日はちょっとナッティでしたね」と、リンさん。その日によって使う豆やブレンドも変わり、味わいが変わるのも楽しい。
「cité(シテ)」
住所:京都市下京区紺屋町375-4
営業時間:8:30~17:00
定休日:火曜、水曜、他不定休あり
TEL. なし
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河原町今出川「手づくりあんみつ みつばち」

特製あんず氷¥1,050(数量限定、〜9月末予定)
「手づくりあんみつ みつばち」のあんず氷は、夏になると「食べに行かなくちゃ」と思うスイーツのひとつ。
あんず氷を出している店はほかにもあるが、こちらのあんず蜜はねっとり濃厚なのが特徴。通常、蜜をかけるとすぐに氷と一体になるが、氷の上に蜜がのった状態をキープ。「あんず氷は蜜が濃厚なため、氷と混ぜながらお召し上がりください」という注意書きが添えられているほどだ。そのため、すぐに氷が溶けてシャバシャバになってしまうことなく、氷のふわシャリ感を存分に味わえる。
あんず蜜は濃厚ながら、甘さ控えめでフルーティーな酸味があり、さっぱり。寒天と赤エンドウが添えられていて、トッピングとして楽しめるのもうれしい。
あんず氷はもともと、あんずのシロップ漬けを作る際、小さかったり、かけたりして、あんみつのトッピングにできないものを利用して作られたのが始まり。今では、かき氷用にあんず蜜が作られているが、それでも製造が追いつかず、数量限定に。早い時は午後1時頃に売り切れてしまうこともあるとか。
「手づくりあんみつ みつばち」は2000年、北野天満宮にほど近い千本商店街でわずか5坪の店から始まり、2003年、河原町今出川に移転。その当時から、昭和から続く店のような店構えで、メニューも、あんみつや豆かん、ぜんざい、ところ天と、昔ながらの甘味が並んでいた。

京都のメインストリート、河原町通に面していながらも、ここだけは時間が止まっているようなほっこりとした店構え
手づくりあんみつ みつばち
住所:京都市上京区河原町通今出川下る梶井町448-60
営業時間:11:00〜18:00
定休日:日曜、月曜
TEL. 075-213-2144
清水五条「三日月氷菓店」

宇治金時¥1,350(ミルクアイス抜きは¥1,300)
今年4月27日にオープンした「三日月氷菓店」。京都で店を開く前は、千葉県・柏市で15年間、同名のかき氷専門店を営んでいて、ハイシーズンは行列が絶えない人気店だったが、店舗を立ち退くことに。そこで、店主・池田佳如さんが大好きな歴史ある街、京都に移転を決めたそう。
かき氷は柏市時代から変わらず、宇治抹茶や黒みつなど、定番4種類と期間限定2種類をラインアップ。これからの時期はすももやすいか、白桃、さらに秋になると、ぶどう、りんご、ピーナッツが登場予定だ。

かき氷屋さん御用達の三重の製氷会社から仕入れる純氷。冷蔵庫から出したてのキンキンに固い状態ではなく、少し温度を高くし、柔らかく緩めてから削ることでふわふわになるそう
三日月氷菓店
住所:京都府京都市東山区下新シ町329
営業時間:10:00〜17:00(16:30LO)
定休日:火曜、水曜
TEL. 075-366-4685
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営業日2日前21:00よりWeb予約可
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二寧坂「かさぎ屋」

しるこセーキ¥750(4月中旬〜10月末までの期間限定)
「かさぎ屋」は、大正3年から二寧坂で店を構える甘味処だ。清水寺に向かう参道、二寧坂は、長く続いていた老舗がどんどんなくなり、その代わりに観光向けの店が増え、街が様変わりしている。さらに、以前にも増して外国人ツーリストや日本人観光客で賑わっているため、地元・京都人のなかには行くのを極力避けているという人も多い。そして私もその一人なのだが、それでも「かさぎ屋」は、人混みをかき分け行きたい店であり、特にかき氷の時期はなおのことだ。
かき氷の中で必ず注文するのが、「しるこセーキ」だ。通常のかき氷と違い、こしあんとかき氷があらかじめ合わさったもので、今で言う、こしあんフラペチーノ。取っ手付きのグラスで出され、スプーンですくって食べると、シャリシャリとろとろ、こしあんとクラッシュアイスの一体感が楽しめる。さらに、時間が経って氷がちょっと溶けた後の甘さが薄まった感じもあっさりおいしい。

二寧坂の石段横。明治末期に建てられた風情ある佇まい
かさぎ屋
住所:京都府京都市東山区高台寺桝屋町349
営業時間:10:00〜17:30(17:10LO)
定休日:火曜
TEL. 075-561-9562
四条烏丸「居雨/KYO」
100年続く老舗も多いが、新店も続々とオープンする街、京都。東京の人気店が京都に出店するケースも多く、「居雨/KYO」も、工藝とアートを扱う白金台「雨晴 AMAHARE」が手がけた茶房だ。

ショップ&ギャラリーに使用されている母屋を抜け、廊下を進んだその先が蔵の茶房「居雨/KYO」
店ができる前から「雨晴 /AMAHARE」の器を使っている京都の料理人や料理家も多く、昨年11月、「KYO AMAHARE」がオープンする際には街の話題に。築130年を超える歴史ある京町家をリノベーションした広々とした店内には、白金の本店同様、陶磁器、ガラス、木工、金工、和紙製品が並ぶほか、2階にはアートプロジェクト「雨跡/AMART」として工藝の延長線上にあるアートが展示されている。
茶房「居雨/KYO」は、「KYO AMAHARE」のオープンから4ヶ月経った3月31日、奥の蔵に誕生した。
「居雨/KYO」は、その名や概念を雨晴が創出し、福岡にある茶酒房「万 yorozu」の茶司 德淵卓さんがその想いを汲んで雨を感じる空間や演出、おもてなし、お品書き等を監修。メニューには、德淵さんセレクトの日本茶と共に菓子が楽しめるコースが用意されている。

大テーブルには炉が備えられていて、スタッフはゲストと共にテーブルを囲み、目の前でお茶を淹れていく
居雨/KYO
住所:京都市中京区蛸薬師通柳馬場東入油屋町127
営業時間:11:00〜19:00(18:00L.O.)
月に2回、夜営業あり(19:00~23:00)
定休日:水曜
TEL. 075-256-3281
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※支払いはキャッシュレス決済のみ。予約優先(予約はオンラインで受付)
東山「鍵善良房 高台寺店」

「鍵善良房」の夏の代表菓子「甘露竹」¥500(〜9月中旬)
享保年間創業、祇園で300年近く続く和菓子店「鍵善良房」。京都に行ったら毎回、こちらで、くずきりを食べるというファンも多い有名店ですが、高台寺店があるのはご存じだろうか。

高台寺や円山公園にほど近い、下河原通に面した一軒家
高台寺店は、実は40年以上前からある。昨年は半年に渡る改装工事を行い、今年1月にリニューアルオープンした。
ひと昔前は、大人の街として知られていた祇園だが、今や日本人観光客と外国人ツーリストでごった返す一大観光スポットとなり、本店も混み合っていることが多く、高台寺店は穴場。しかも、リニューアルを機に設けられた半個室は電話予約ができるのがありがたい。
「鍵善良房」は花街・祇園という場所柄、茶人や僧侶はもとより、お茶屋や料亭に出入りする文人墨客や旦那衆、花街の女性たちにも広く愛されてきた和菓子店だ。店の代名詞であるくずきりも、元々は、食後のデザートやおやつとして、料理屋さんやお茶屋さん、芝居小屋に配達していたそう。くずきり用の二段重ねの蓋付き漆器も、配達することを考慮し、木工作家・黒田辰秋がこの仕様にしたという。
「鍵善良房 高台寺店」
住所:京都市東山区下河原通高台寺表門前上ル
営業時間:10:00〜17:30LO ※混み具合によって閉店が早まる場合もあり
定休日:水曜(祝日の場合は翌日休)
TEL. 075-525-0011
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河原町五条「喫茶ジャニー」

喫茶店の王道メニュー、ナポリタンとコーヒーゼリー
「喫茶ジャニー」は今年5月7日オープンしたばかりの新店ながら、店内は、昔からそこにあったような”純喫茶”感が漂っている。長く続いている店じゃないなら、喫茶店の居抜き物件に違いないと思うが、実は古民家を改装しているという。
京都には、古民家を改装した町家カフェは多いが、それとは違う純喫茶を目指したというオーナー・小山利行さん。ヴィンテージの花柄の壁紙を貼り、アンティークの家具を配し、ザ・昭和の喫茶店感漂う木製カウンターやスツールは特注したという。
オーナー・小山さんは「炭火焼鳥 チャブヤ」や「おでんと釜飯 ムロ」など、京都で飲食店を展開していて、こちらで6店舗となる。
「もともと串揚げとおでんの店で、おでんだしで作ったカレーに串揚げに使う豚ヒレカツをのせて出していてたんですが、それが好評で。最初はカレーの店を出そうかと思ったんですが、喫茶店もやってみたいと思っていたので、純喫茶を作りました」と、小山さん。
自慢のカツカレーは、昆布や混合節から取った出汁と牛すじ出汁を合わせたおでん出汁がベースに。小麦粉を使わず、玉ねぎやトマト、マッシュしたじゃがいもなど、野菜でとろみをつけているので、よくある欧風カレーのような重たさがなく、サラリと軽やか。上にのっているカツもカレーとの相性を考え、ロース肉をかなり薄めスライスしてあり、ペロリといける。
ほかにも「特製カツサンド」や「フライドポテト+オムレツ+カレーソース」といった食事にもアテにもなるメニューやお酒もそろい、喫茶利用だけでなく、昼からお酒も楽しむこともでき、大人がゆっくりできる喫茶店になっている。

最近、新店が増えている五条エリア。四条河原町から徒歩10分、京都市営地下鉄五条駅から徒歩9分
「喫茶ジャニー」
住所:京都市下京区五条麩屋町上ル下鱗形町540-1
営業時間:11:30〜19:00(不定期で夜営業あり)
定休日:不定休
TEL. 080-9056-8163
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御所南「一保堂茶舗 京都本店」

京都本店限定「特撰煎茶」菓子付き¥1,980
京都を代表する日本茶専門店「一保堂茶舗 京都本店」が、半年間の改装工事を終え、2023年12月にリニューアルオープンした。
「一保堂茶舗」の創業は1717年。蛤御門の変で店舗を焼失し、1864年に今の場所に再建されたというエピソードも京都っぽく、現在、売り場に使っている母屋は、再建された当時のものだという。

間口が広く、重厚な外観
今回の改装工事では母屋の耐震補強も主な目的に。とは言え、売り場は、一見、改装前と全然変わっていないようにも。
しかし実は、漆喰の壁は一度剥がして、補強のための耐震壁を入れて、また漆喰を塗り直し、床をめくって、香川県牟礼で産出される高級石材、庵治石を敷き直すなど、古き良き佇まいをそのままに、隅々にまで手がかけられている。
「一保堂茶舗 京都本店」
住所:京都市中京区寺町通二条上ル常盤木町52
営業時間:10:00~17:00(喫茶LO16:30)
定休日:第2水曜
TEL. 075-211-4018
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河原町丸太町「冬夏」

京都御所と鴨川に挟まれた住宅街に店を構える「冬夏」。築100年余りの広々とした日本家屋の一室、席数をあえてカウンター6席に絞り、日本茶をじっくり味わえる店造りがされている。
写真は、2煎目を淹れていただいているタイミングで出される一つめの菓子。この日は、植物性素材で作るタルトタタン
ティールームでいただけるお茶は、農薬や化学肥料を使わない、オーガニックの日本茶のみ。日本茶専門店の多くは、いつも変わらぬ店の味を提供できるように、産地や品種、蒸し具合も様々な茶葉をブレンドする”合組(ごうぐみ)”を行っているが、こちらでは、あえて単一農園の茶葉を使用。農薬や化学肥料に頼らず育てられた茶葉は、茶樹の生命力を鍛え、茶葉自らの力で滋味を醸成。産地、さらには畑ごとの茶樹の違い、製法、施肥の有無、収穫年によって、味がまったく変わってくる。

庭を望むカウンター6席
オーナーは長年ギャラリーを営んでいるだけあり、お茶を飲むための設えや道具、空間も洗練されていて、茶室にいるような凜とした空気感も心地いい。どのお茶も6、7煎まで楽しむことができ、煎を重ねるごとに変化する味やアロマを追いかけながら、新しい日本茶との出会いを感じることができる。
「冬夏」
住所:京都市上京区信富町298
営業時間:11:00~18:00(17:30LO)
定休日:火曜、水曜
TEL. 075-254-7533
予約制(前日まではWeb予約、当日は電話で受付。席が空いている場合は、予約なしでも利用可)
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河原町「菓子屋 温 京都御幸町」

大福を使ったデザート「浮雲いちご」¥860、有機抹茶「五香」¥680
今回紹介するのは、昨年11月にオープンした和菓子と日本茶を楽しめる「菓子屋 温 京都御幸町」。入り口のカウンターには、さまざまな意匠の和菓子が並んでいるが、実はこれらはすべて大福がベースになっている。

菓子は季節替わりを含め、常時8種類ほどそろう
店主・山岡すず花さんが作る大福は、餡を白い餅で包んだお馴染みのものとはまったく違い、独創的。
つぶ餡を餅と黒ごま餡で包み、苔を模したよもぎと抹茶のそぼろ餡で包んだ「苔結び」や、刻んだ柚子をシナモンやカルダモンなどスパイスを合わせた餡と餅で包み、青大豆のうぐいす粉をまぶした「温香」など、姿も素材使いも斬新で、いただく前から味の想像が膨らみ、ワクワクさせてくる。
「菓子屋 温 京都御幸町」
住所:京都市中京区御幸町通六角下ル伊勢屋町341-1
営業時間:12:00~18:00
定休日:火曜、水曜
TEL. 075-708-6446
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烏丸丸太町「シェリー メゾン ド パフェ」

カウンターに完成したパフェが並べられると、しばし撮影会になるほど、圧巻のビジュアル
予約が取れない割烹やレストランはよくあるが、今回紹介するのは、予約が取れないデセールパフェ専門店「CHÉRIE MAISON DU PARFAIT(シェリー メゾン ド パフェ)」。オーナー・小林かなえさんは、23歳で渡仏し、パリの料理製菓学校「エコール・リッツ・エスコフィエ」卒業後、パリの星付きレストランやホテルで修業。帰国後は地元・京都で菓子教室を開き、現在は、NHK「きょうの料理」の出演をはじめ、TVや雑誌、書籍などでも活躍している菓子研究家だ。
メニューはパフェをメインにしたコースのみで、一斉スタートという今どきの割烹のようなスタイルも珍しい。カウンターに座ると、目の前のキッチンでパフェのパーツを組み立て、できあがるまでの工程を楽しむことができる。さらに、できあがったパフェがズラリと並ぶ光景を見ることができるのも、一斉スタートならではの醍醐味だ。
パフェは1ヶ月ごとに内容がかわり、11月は栗、12月はクリスマスのパフェの予定。
狭き門ではありますが、ライブ感満載のパフェコースを五感をフルに使って楽しんでみてください。
CHÉRIE MAISON DU PARFAIT(シェリー メゾン ド パフェ)
住所:京都市中京区竹屋町通室町西入ル相生町281
営業時間:木・金・土10:00~、13:00~の一斉スタート(土・祝日のみ15:00~もあり)
定休日:日曜~水曜
TEL.なし
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河原町御池「ATELIER PAGES KYOTO」

デーツミントとオレンジクローヴのジェラート・ダブルカップ¥650
2023年7月、パリの一つ星レストラン「Restaurant Page」のシェフである手島竜司氏が日本に初のショップ「ATELIER PAGES KYOTO(アトリエ パージュ キョウト)」をオープン。ショップでは、ジェラートと焼き菓子が楽しめるほか、2023年11月からはパリから届くショコラの販売もスタートした。
手島氏は26歳で渡仏。星付きレストランで修業を重ね、2014年「Restaurant Page」をオープン。2016年にはオープンから1年半という早さでミシュランガイドにて一つ星を獲得している。
「パリで修行を始めて20年、自分の店を出して10年という年に、日本でも何かしたいと思って。パリと姉妹都市である京都は歴史を重ねた街であり、パリとも雰囲気が似ているので、京都への出店を決めました」と、手島氏。
店頭に並ぶ菓子は、パリの技術をただ日本に持ち込んだものではなく、フランスに長く暮らす手島氏が、パリの仲間と作り上げた新しいエスプリを込めた、料理人発想のスイーツになっている。
特にジェラートは、パリをメインフィールドに活躍する料理人らしい素材の使い方や組み合わせを発揮。

オレンジクローヴのジェラート・シングルカップ¥500。オレンジは皮まで使い、皮の食感や苦みがしっかり。クローヴも加わり、複雑味も増し、食べ飽きない
ATELIER PAGES KYOTO
住所:京都市中京区御池通河原町東入南側下丸屋町412-3
営業時間:10:00~18:00
定休日:水曜
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堀川五条「菓子屋 のな」

2種類のあんこ玉にハーブを添えた「アントニオとララ」¥940(持ち帰りのみ。写真は盛り付け例)。アンデルセン作・森鴎外翻訳の「即興詩人」をオーマージュ。菓子銘には、登場人物二人の名前がつけられている
夫婦二人で営む持ち帰り専門の小さな和菓子店「菓子屋 のな」。店内は、オープンキッチンのカウンターに菓子が並び、和菓子屋さんというより焼き菓子店のような素朴で可愛い雰囲気が漂っている。
ガラスケースに飾られた生菓子も、台湾パインあんを包んだ外郎やメロンとココナッツミルクあんを忍ばせたわらび餅など、斬新すぎるラインアップに。
従来の生菓子は、意匠や銘で季節を表現しているが、こちらの生菓子は、フルーツやハーブを使い、味や香りからも季節の移ろいを感じさせてくれる。
いちご大福が世の中に広まっているように、甘酸っぱいフルーツとたあんこは相性抜群。フルーツを使った生菓子がこれまであまりなかったのが不思議なほど!と思っていたら、
「上生菓子は、茶席で濃茶をいただく前に出されるものであり、あくまでも濃茶が主役。そのため制約がありますが、私が作る生菓子は、茶席用ではなく、日常に楽しんでもらうためのものなので、香りづけに洋酒を使ったり、コクを出すときに乳製品を加えたり、自由に作っています。紅茶やコーヒー、お酒にも合わせてください」と、名主川千恵さん。

和菓子店っぽくないモダンな店内。イートインはなく、持ち帰りのみ
菓子屋 のな
住所:京都市下京区篠屋町75
営業時間:12:00~18:00(売り切れ次第閉店)
定休日:日曜、月曜
TEL. なし
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烏丸丸太町の「YUGEN」

「無花果と胡桃の炙り餅とお茶」¥1,900。お茶は、京都・和束の最高級煎茶、さえみどりを合わせて。さえみどりは、お茶を収穫する前に覆いをかけて遮光するかぶせ茶で、渋みが少なく、甘味や旨みを凝縮。3煎目まで楽しめる
宇治茶は日本三大銘茶の一つと呼ばれ、京都市内でも、日本茶をさまざまなスタイルで楽しめる店に出会える。日本茶を製造・販売する茶舗は、長い歴史を持つ老舗が大半を占めるなか、「YUGEN」は2018年に誕生。昨年2月に店舗を移転拡大し、注目を集める日本茶ブランドだ。
「YUGEN」で製造・販売されている茶葉は、宇治や宇治田原、和束、京田辺など、京都近郊の産地に限定されている。仲買い問屋を挟まず、生産者から直接仕入れることで、高品質な茶葉を低コストで提供。煎茶は、単一農園で収穫されたシングルオリジンも人気が高い。
店舗展開としては、「おいしい日本茶をコーヒーのように気軽に楽しめる場所があれば」との思いから2018年、わずか2.5坪の日本茶スタンドからスタートした。ここ数年で、日本茶を提供するカフェやカジュアルな茶処も増えたことから「YUGEN」は次のステージに進み、2022年2月に、築50年弱のビル1棟に移転オープンした。
新店舗の1階は、カウンターのみのカフェに。「茶の湯の文化は戦国時代に広がりました。茶室には刀を持って入ることが許されず、戦国武将にとって、茶室は唯一心が安らげる場所だったとも言われています。多忙を極めるストレスフルな今の時代にも、そんな場所や時間が必要だと思うんです」と、代表・須藤惟行さん。

風炉釜を備えたカウンター席
YUGEN(ゆうげん)
住所:京都市中京区亀屋町146
営業時間:11:00~18:00
定休日:不定休
TEL. 075-708-7770
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祇園「ハーモニカ」

直径12cmのタルトは1人で頬張っても、シェアしても。「イチゴのタルト」¥2,100
「タルトがおいしい店が祇園にできてるよ」と、友人に教えてもらい、「ハーモニカ」を初めて訪れたのが数ヶ月前。電柱には”この先行き止まり”の注意書きが貼られ、地元の人も入ったことないような路地を進む。”焼き菓子とデザート”と書かれた立て看板はあるものの、紋入りの暖簾がかけられた入口で靴を脱ぐというスタイルに、一瞬たじろいでしまうが、恐る恐る店に入ると、そこには色とりどりのサンダルが並んでいた。

複合空間「Gion Naito 123 market」の入口には「祇園 ない藤」が手掛けるぞうり形のサンダルJOJOのショップがある
元々こちらは老舗の履物匠「祇園 ない藤」の工房だった場所。昨年5月、「祇園 ない藤」のオリジナルサンダルJOJOのショップを含む複合空間「Gion Naito 123 market」に生まれ変わり、焼き菓子とデザートの店「ハーモニカ」はJOJOショップの奥で営業されている。
メニューには、季節のフルーツを使ったタルトが6種類ほど並ぶほか、趣向を凝らしたパーツを美しく盛りつけたアシェットデセールも10種類近くラインアップ。
店主・松本泰さんは、元フランス料理のシェフであり、菓子も素材ありきな料理人視点から作られている。
ハーモニカ
住所:京都市東山区亀井町43-2 Gion Naito 123 market内
営業時間:11:00~18:00(L.O.17:30)
定休日:火曜
TEL. 050-3551-8625
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祇園「ZEN CAFE」

上生菓子¥800。4月の上生菓子はきんとん製の遠山(えんざん)。桜に加え新緑が増える4月の山が表現され、4月も末に近づくほど緑の分量が増えるそう
和菓子屋さんと一言に言っても、菓子司もあれば、饅頭屋さんや餅屋さんもあり。菓子司のなかには上生菓子の予約販売をメインにしている店もまだまだ多く、持ち帰り専門店が主流に。そのため「イートインで上生菓子を食べたい」と、リクエストを受けると、祇園の「鍵善良房」が手掛ける「ZEN CAFE」をお勧めすることが多い。
「鍵善良房」は、江戸享保年間創業、京都の花街・祇園で京菓子を作り続ける菓子司。最近は京都以外でも商品を買える和菓子店が増えてきたが、「鍵善良房」は京都のデパートにすら出店されていない、昔ながらの真摯な仕事と一対一の商いにこだわる店だ。
2012年にオープンした「ZEN CAFE」は、本店とはまったく違う菓子のラインナップになっていて、上生菓子もここでしか食べられないものに。上生菓子は季節がわりだが、きんとんが出されることが多く、初めてこちらのきんとんに出会った時、その繊細で儚げな姿に驚いた。通常、きんとんのそぼろあんは、馬毛の裏ごし器を使って作られるが、こちらの裏ごし器は、馬毛の目が細かく、そぼろあんも糸のような細さだ。このそぼろあんを崩さず、あん玉に纏わせる職人技もすばらしく、持ち帰り不可だからこそ出せる上生菓子になっている。見た目もさることながら、口に含むとふわっと崩れる、柔らかな食感もたまらない。

吉野葛と水、砂糖のみで作るくずもち¥1,000。葛の風味を味わえ、そのままでもおいしいが、途中で黒蜜やきなこを加えると、また違った味が楽しめる
また、通年で出されているくずもちもファンが多いメニューに。本店でいただける名物のくずきりと、砂糖を使う以外は、吉野葛と水というまったく同じ材料なのに、食感が全然違っている。つるんとのどごしを楽しむくずきりと違い、こちらのくずもちは、ぷるんとしていて、口に含むとむっちり、とろけていく。葛の風味もしっかり感じ、そのままでもおいしい。
ZEN CAFE
住所:京都市東山区祇園町南側570-210
営業時間:11:00~18:00(L.O.17:30)
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)
TEL. 075-533-8686
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河原町五条「ともみジェラーto」
2022年3月に河原町通沿いの路面店に移転オープンしたジェラテリア「ともみジェラーto」。ジェラートって、どこで食べても結構おいしいけど、突出した店って意外に少ないと思っていたなか、ここまでキャラがしっかり立ったジェラートとの出会いは衝撃的でした。

壁に貼られた本日のラインアップ。食材と共に産地や生産者の名前も書かれている
その日のフレーバーは、ミルクや旬のフルーツに加え、クレソン、ルッコラ、葉山椒など、青果店と見間違うラインアップに。
オーナー・森兼ともみさんは「ジェラートは素材の味をダイレクトに感じるスイーツであり、日本においしい食材がたくさんあることをジェラートを通してもっと広めたい」と、イタリアのジェラテリアでの修行を経て、6年前に京都で自身の店をオープン。
森兼さん自ら生産者に会いに行き、おいしい食材をハントすることも多く、ジェラートは”素材ありき”で作られる。そのため、唯一の定番となる岐阜latte TAKANASHIミルク以外は、その時期に入荷する食材に合わせてフレーバーがどんどん移り変わるのも特徴的だ。

森兼さんのイラスト入りテイクアウト用カップ。唯一の定番、ミルク¥550
香料や着色料、安定剤は不使用で、どのフレーバーも素材の味が濃厚。ジェラートが4つも入った本日のパフェも、余ったるさや重たさがなく、ペロリといけるおいしさだ。
ともみジェラーto
住所:京都市下京区西橋詰町759 SAKIZO河原町五条ビル1F
営業時間:13:00~20:00(19:30LO)、土曜13:00~22:00(2Fカフェは19:30LO)、水曜はモーニング営業7:30~11:30(L.O.)
定休日:木曜(7月8月は無休)
TEL. なし
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西陣「うめぞの茶房」

「新しょうがと桃の志るこ氷」お茶付き¥1480
京都通のなかには「”うめぞの”って昔からある甘味処でしょ」と気づかれた方もいるのでは。はい、ご名答。こちらは、1927年創業の「甘党茶屋 梅園」の系列店として2016年にオープンした茶房だ。とはいえ、名物の四角いみたらし団子はなく、「甘党茶屋 梅園」とはまったく異なるメニュー展開になっている。
夏期限定で登場するかき氷も、宇治や黒蜜など、甘味処でお馴染みの味はなく、フルーツと和素材を組み合わせたオリジナリティ溢れるものに。果物の旬に合わせて内容は移り変わり、今の時期は、一番人気の「新しょうがと桃の志るこ氷」が楽しめる(桃がなくなる8月下旬まで)。
「新しょうがと桃の志るこ氷」の後は、「秋の果物とはちみつ志るこ氷」、「栗キャラメルミルク氷」と続くそうで、そちらもお楽しみ。
「うめぞの茶房」
住所:京都市北区紫野東藤ノ森町11-1
営業時間:11:00~18:30(18:00LO)
定休日:無休
TEL. 075-432-5088
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烏丸「大極殿本舗 六角店」

レモンの輪切りが寒天に浮かぶレースかん¥1,458
「大極殿本舗 六角店」は、明治18年に『山城屋』という屋号で創業。明治28年には二代目が長崎でカステラ製造の技術を習得し、京都でいち早くカステラ製造を開始した和菓子店だ。
二代目に続き、三代目もハイカラ好きだったそうで、夏にぴったりな涼やかな「レースかん」も昭和初期に誕生したものだそう。まだレモンが珍しかった時代、レモンを錦玉羹に取り入れるなんて発想が大胆。レモンの輪切りをレース模様に見立て名付けられた銘も素敵すぎる。
店内には甘味処 栖園が併設されていて、夏に登場するかき氷も毎年、お楽しみ。定番の宇治や黒蜜のほか、レモンみぞれやミルクミント、梅酒みぞれなど、こちらもハイカラなラインアップに。赤紫蘇みぞれは、初夏、京都の里山・大原で採れた赤紫蘇をシロップに。天然のルビー色も美しく、さっぱりした味わいで暑い時期にぴったりだ。
2002年、甘味処を作る際に考案されたという「琥珀流し」もおすすめ。糸寒天を使い、固まるか固まらないかのギリギリの水分量で作られた寒天は、柔らかく、ほろりと崩れる食感がたまらない。8月はひやしあめ、9月はぶどう、10月は栗、と、月ごとに味わいが変わり、いつか制覇したい。
大極殿本舗 六角店
住所:京都市中京区六角通高倉東入ル
営業時間:9:30~18:00(甘味処 栖園は10:00~17:00)
定休日:水曜
TEL. 075-221-3311
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北野天満宮前「粟餅所 澤屋」

粟餅10個入り ¥1,400。通常はあんこ6個、きなこ4個だが、好みの割合に変更できる
創業100年越えの老舗店が多い京都ですが、「粟餅所 澤屋」の歴史もかなり長く、創業はなんと天和2年(1628年)。現当主・森藤哲良さんは13代目にあたり、銘菓・粟餅も390年以上前から作られているという。

北野天満宮の目の前。毎月25日は天神市が開催され、境内には露店が並び、特に賑わう
祖先は楠正行公の臣下で、正行公の死後、その首塚守護のために京都・嵯峨野に移り住み、その地で農業を営むことに。そして、その子孫が自作の粟をついて餅を作り、北野天満宮の境内で販売したところ、北野名物として知られるようになり、1638年に刊行された俳書「毛吹草」にも”山城名物北野粟餅”として紹介されている。
粟餅所 澤屋
住所:京都市上京区紙屋川町838-7
営業時間:9:00~17:00
定休日:水曜、木曜、26日
TEL. 075-461-4517
西院「まるに抱き柏」

すべすべの餅に大粒の黒豆がゴロゴロと存在感を放つ銘菓「黒豆大福」
人口あたりの和菓子店の数が日本一多い京都。昔は、茶席で最上のもてなしとして出される”上生菓子”と、大福や団子、餅菓子、おまん(饅頭)といった”日常のおやつ”を作る店は明確に分かれていたのが、最近では、ジャンルレス化が進行中。今回紹介する「まるに抱き柏」も上生菓子と日常のおやつが仲良く並んでいる。

和菓子の名店で15年研鑽を積み、2021年に店を開いた西森敬祐さん
代表銘菓は「黒豆大福」。餅米の粉に砂糖や水飴を加えて練り上げた求肥で包む大福もあるが、こちらでは、毎朝、餅米を蒸し、きめ細かい食感になるまでついた餅を使用。餅はかたくなるのが早く、賞味期限が当日中の朝生菓子になっている。「求肥よりも日持ちはしませんが、つきたての餅は、コシがあるのにもっちり柔らかく、食感が格別です」と、西森さん。
甘みをおさえた餅生地は、餅米の風味がしっかり感じられ、雑味のないなめらかなこしあんともよく合い、ペロリといけるあっさり感。餅に練り込んだ密漬けの黒豆もホックリおいしいアクセントを添えている。
まるに抱き柏
住所:京都市右京区西院平町21
営業時間:9:00~18:00
定休日:火曜、他不定休あり
TEL. 075-748-9650
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今出川「大黒屋鎌餅本舗」

こしあんを求肥で包んだ「鎌餅」¥237
店名にもなっている鎌餅を初めていただいた時、まずは手触りに驚いた。それはまるで赤ちゃんのほっぺみたいに、ふわふわすべすべだった。
餅菓子と一口に言っても、餅米を蒸してついたものもあれば、餅粉を蒸して砂糖を加え、じっくり練り上げた求肥もあり。「鎌餅」には後者の求肥が使用されているため、キメが細かく、なめらかな口当たりが楽しめる。
稲を刈り取る鎌の刃の形を模していて、豊作祈願のほか、福を刈り入れるという願いも込められているそうで、縁起も良し。餅菓子は日持ちしないことが多いが、求肥を使った「鎌餅」は賞味期限3日と少し長めに。3日目でもかたくならず、すべすべもち肌をキープしていて、京土産にもオススメだ。

阿弥陀寺の門前に店を構えて120年余り。イートインはなく、持ち帰りのみ
大黒屋鎌餅本舗
住所:京都市上京区寺町通今出川上ル四丁目阿弥陀寺前町25
営業時間:8:30~18:30
定休日:水曜、第2・第4木曜
TEL. 075-231-1495
堀川丸太町「京都 くりや」

栗おはぎ2個入り¥560。予約は前日まで可能
栗の産地として知られる丹波にあった「くりや」の暖簾分けとして大正年間に創業。店名通り、店内には栗最中や栗どらやき、栗クッキーなどが並び、まさに栗づくし!中でもオススメしたいのが、秋限定の「栗おはぎ」だ。

大看板は店名ではなく、銘菓「金の実」と書かれている
「栗おはぎ」は元々、秋の収穫を祝い、丹波の家庭で作られていた菓子だそうで、店でも昔は1年に1日のみ販売されていたそう。
餅米の周りは小豆のあんこではなく、栗餡を使用。丹波産の新栗を皮ごと蒸し、実をかき出し、なめらかになるまで裏ごしし、砂糖を加えて炊き上げた手間暇かかった餡に。栗の風味がダイレクトに味わえ、もっちりとした餅米ともよく合い、食べ応えも満点だ。
毎秋、販売が開始するのを心待ちにしているファンも多く、週末には開店前から列ができ、午前中に売り切れてしまうことも多いそう。
京都 くりや
住所:京都市中京区丸太町通堀川東入大文字町42-4
営業時間:9:00~18:00(日曜・祝日10:00~15:00)
定休日:月曜(祝日の場合、翌日休)
TEL. 075-231-4564
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烏丸御池「亀末廣」

9月末から1ヶ月ほど店頭に並ぶ「栗きんとん」¥500
文化元年(1804年)創業、7代続く和菓子店。二条城や御所に菓子を納めていた由緒正しい老舗であり、間口の広い堂々とした店構えからも風格が漂っている。今の時代、店を訪れずして商品を手に入れられることが増えたが、こちらはいまだ支店を持たず、ネット販売も行わず、一対一の商いが大切にされている。

創業当時の外観を残す浅瓦葺きの京町家
代表銘菓「京のよすが」をはじめ、端正な佇まいの菓子を求め、一年を通して茶人や粋人に支持される店だが、9月も後半になると「もうそろそろ栗は始まっていますか」という問い合わせが増え、一層にぎわいをみせる。
こちらの栗きんとんは、こしあんを餡玉に栗と備中白小豆を使った柔らかなそぼろ餡が纏わせてあり、なめらかな口当たりに。しっかり甘いが、その甘さが栗を引き立て、ほのかな苦みなど、和栗本来の味が存分に楽しめる。
亀末廣
住所:京都府京都市中京区 姉小路通烏丸東入車屋町
営業時間:9:00~17:00
定休日:日曜、祝日
TEL. 075-221-5110
烏丸御池「パティスリー レモワノー」

ちょっと固めのプリンやアーモンド付きの肉厚のシュー皮が香ばしいシュークリームなど、クラシカルな洋菓子が並ぶ
築160年の京町家を改装したパティスリー。店主の勝本真理さんは、京都のみならず全国のスイーツ好きを魅了し、2018年に幕を下ろした後も語り継がれるフランス菓子店「オ・グルニエ・ドール」で10年研鑚を績み、2019年に独立。
「ご近所さんがおやつを買いにきてくれる店になりたい」と、酒やハーブ、スパイスなどは効かせず、シュークリームやイチゴショートなど、素直なおいしさのケーキが並ぶ。

熊本県産の和栗をたっぷり使ったモンブラン¥800
モンブランは、毎年秋に登場するのを楽しみにしているファンが多いケーキ。熊本の決まった農家の利平栗のみを使用するため、年によっては店頭に並ぶのが遅い時もあり。
モンブランにメレンゲを使う店が多いが、こちらではふんわり軽いシュクセを土台にし、クリームとの一体感もアップ。オ・グルニエ・ドールの西原シェフから学んだフランス菓子の基本となるパーツ作りを大切に、生地やクリームもていねいな仕事がされていて、シンプルながら繊細かつ上品さが漂っている。
Patisserie Les Moineaux
パティスリー レモワノー
住所:京都市中京区押小路通衣棚西入上妙覚寺町208-5
営業時間:12:00~18:00(売り切れ次第閉店する場合もあり)
定休日:月曜、火曜(祝日は臨時営業する場合もあり)
TEL. 075-746-6092
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小さな焼き菓子店
御所南「Un Son Doux pâtisserie(アンソンドゥパティスリー)」
「Un Son Doux pâtisserie(アンソンドゥパティスリー)」は今年6月オープンながら、その存在はオープン前から気になっていた。
オープンの数ヶ月前、ワイン&コーヒースタンド「SUMI」に取材に行った際、店主が「店舗を持たず間借り営業しているすごいおいしい焼き菓子店があって、うちにも近々置いてもらうことになったんです」と、「Un Son Doux pâtisserie」の名前を教えてくれたのだ。

表面はマカロン生地を重ねたカリカリ食感。アーモンドクリームをパイ生地で包んで焼き上げた「パンコンプレ」¥650

杏とアーモンドクリームを詰めたタルト「ミルリトン」¥430、プディングみたいなアパレイユにグリオットチェリーを忍ばせた「ロレーヌ」¥430、「カヌレ」¥350など
開店してすぐに訪れ、まずはカヌレやミルリトン、マドレーヌなど、定番のフランス伝統菓子をいただいたのだが、そのどれも、香りや味、食感をしっかり感じる、輪郭がキリリッとした印象だった。
オーナーシェフ・清水孝志さんは、「オーボンビュータン」で5年研鑽を積んだ後、「現地の菓子作りに触れたい」とフランス・サヴォワのパティスリーで1年働いたそうで、そのキャリアを聞けば、納得のクオリティーだ。
「Un Son Doux pâtisserie(アンソンドゥパティスリー)」
住所:京都府京都市中京区麩屋町二条上ル布袋屋町495-1
営業時間:8:00~18:00
定休日:日曜日
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河原町丸太町「Un petit peu??(アンプティプ??)」

「有機人参のキャロットケーキ」¥500、白ワイン・グラス¥750〜
大好きな菓子店はいっぱいあるが、今月は、2022年以降にオープンした今、注目の焼き菓子店をピックアップ。わざわざ足を運んでほしい3軒です。
2023年11月、河原町通と鴨川に挟まれた小道沿いにオープンした小さな焼き菓子店「Un petit peu??(アンプティプ??)」。
店主・溝川沙智子さんは、「ローズベーカリー銀座」や「ザ・リッツ・カールトン京都」で経験を積み、独立。カウンターに並ぶ焼き菓子は、フランス菓子もあれば、イギリス伝統菓子やアメリカンベイクもあり、パティシエ歴20年の集大成。
定番の焼き菓子では、「有機人参のキャロットケーキ」と「瀬戸内レモンケーキ」の人気が高く、「有機人参のキャロットケーキ」は、粗めにカットした有機ニンジンの食感も小気味よく、スパイシーな生地とクリームチーズを使ったクリームの相性も抜群だ。

「瀬戸内レモンケーキ」¥450
「瀬戸内レモンケーキ」は生地にまでレモン果汁やレモンの皮が使ってあり、さわやかな味わい。ふっくら生地にシャリッとしたアイシングもいいアクセントになっている。
そのほか、具材を練り込んだマフィンやスコーン、季節のフレッシュフルーツを飾ったタルト、スモアやラズベリーブリュレパイといったパイ菓子も日替わりで登場。
「Un petit peu??(アンプティプ??)」
住所:京都市上京区駒之町552-1
営業時間:11:00~17:30(売り切れ次第終了)
定休日:不定休
TEL. 070-8330-5556
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二条城「サイベイクス」

ゴルゴンゾーラの塩気が効いていて、ワインのアテにもぴったり。有機プルーンのスパイス赤ワイン煮を忍ばせた「ゴルゴンゾーラのベイクドチーズケーキ」¥780
大好きな菓子店はいっぱいあるが、今月は、2022年以降にオープンした今、注目の焼き菓子店をピックアップ。わざわざ足を運んでほしい3軒です。
「Saibakes(サイベイクス)」が店を構えるのは、二条城に近い住宅街の路地奥。店前に店名が書かれた小さな額が立て掛けてあるものの、古民家風情をそのまま残す外観は、”店”というより”家”そのものだ。さらに営業は金、土の2日間のみと、隠れ家感も満載だ。

看板がわりに立て掛けられた額が目印
引き戸を開け、玄関で靴を脱いで中に入ると、カウンターの上には、ベイクドチーズケーキやタルト、にんじんケーキなど、焼き菓子が並んでいる。
「菓子は好きなんですが、精製されたものを食べると、身体の調子が悪くなることがあって。そこから材料について調べるようになり、自分の好きな材料で菓子を作るようになりました」と、店主・谷百合香さん。
菓子に使う材料は、国産きび砂糖や種子島の洗双糖、スペルト小麦など、精製されていない砂糖や小麦をはじめ、身体に優しいものをセレクト。
「Saibakes(サイベイクス)」
住所:京都市中京区姉西町42-3
営業時間:金・土11:00~17:00
定休日:日曜〜木曜
TEL. なし
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天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント